離婚をしたいけれど相手が納得しない!という場合は、離婚調停へとステップを進めていくことになります。
しかし、離婚調停でもうまくいかなかった場合、それでも離婚したければ裁判へと進むことになります。
とはいうものの、すべてのケースで離婚が認められるわけではなく、裁判で離婚が認められるのは、民法で定められた離婚要件に当てはまる場合となります。
民法で認められた法定離婚原因の中に「悪意の遺棄」というものがあります。「悪意の遺棄」と聞いてもなかなかどういったものかわかりにくいですよね。
今回は、この「悪意の遺棄」についてご説明していきましょう。
■夫婦には同居義務と協力扶助義務があります
婚姻届を提出して、法律的に夫婦になると、民法では、夫婦として一緒に暮し、家計を同一にして家庭の維持に努めるという義務が発生します。
つまり、夫婦は同居をして、お互いに家庭生活が上手くいくように努力をしなくてはいけないということになります。
この二つにおいて故意的に反故する行為を取ることを「悪意の遺棄」というのです。
つまり、このままだと夫婦関係の維持が難しいと分かっているのにもかかわらず、相手の事を放っておくことということになります。
ここで、ポイントになるのは、夫婦関係の維持が難しいと自覚しているかどうかということです。
また、たとえば同居が出来ない環境や、家計を同一にするには難しい環境などになった時にすべて「悪意の遺棄」と認められるわけではなく、正当な理由があれば、「悪意の遺棄」とはなりません。
■悪意の遺棄と認められるのはどんなケース?
では、悪意の遺棄と実際に認められるのはどういった場合なのでしょうか?
・同居していて収入もあるのに生活費を渡さない
・不当な理由で同居を拒否する(家に入れない/家を出ていく)
・配偶者が働き自分は働いていないのに家事をしない
・不倫相手の家から帰宅しない
・合意の上の別居の際に生活費を渡す約束をしたにもかかわらず渡さない
・別居中生活費は送ってくれるが不倫相手と生活している
・暴力やモラハラなど別居せざるを得ない状況に追い込む
・働くべき環境で働こうとしない
・姑など配偶者の家族と折り合いが合わないからと実家に帰りもどってこない
・単身赴任中、別居の妻子の生活費を負担しない
・夫婦共働きなのに一方に家事・育児を押し付ける
大きく例を挙げると上記のような事柄となります。一方的に状況を悪くしたり、金銭に関する負担を拒否するなどのケースで認められることが多いようです。
もちろん、これ以外にも認められる事柄はありますので、不安な場合は弁護士などに相談するのもよいでしょう。
下記のようなケースでは「悪意の遺棄」とは認められないようです。
・仕事上単身赴任が必要な場合など正当な理由による別居
・夫婦関係について冷静に見つめ直すための別居
・配偶者の不貞行為が原因による別居
・配偶者の暴力やモラハラ、酒乱などの危険から回避するための別居
・夫婦関係破たん後の別居(別居が破綻理由にならない場合)
つまり、別居するのにふさわしい正当な理由があれば、悪意の遺棄とは認められないということになります。
ただし、一方的な別居は判断が分かれるところでもありますので(配偶者が一方的に悪いケースなどをのぞいて)、別居の際には、別居についてと、別居時の生活費の負担などについて出来る限り話し合いをしておきましょう。